「吟醸蔵商品群」ブランドの誕生
「吟醸蔵商品群」ブランドの誕生
2013年「吟醸蔵商品群」ブランドが誕生した。
フジワラテクノアートは、清酒製造機械群の中で、製品評価も高く、吟醸酒製造に特化した機械製品をラインナップとして展開。美味しい吟醸酒はその蔵のブランド酒、いわば顔となる。
どの工程ポイントを計画的に機械化していけば、より高品質で安定した美味しい吟醸酒をつくりだせるかを考え抜いた「吟醸蔵商品群」は、フジワラテクノアートの技術と知恵の集大成であり、杜氏や蔵人の最強パートナーだ。
吟醸蔵商品群ブランドの誕生
フジワラテクノアートが清酒プラントに力を入れはじめたのは、平成元年(1989)頃。
平成5年(1993)頃には原料処理設備(浸漬タンク、蒸米機、冷却機、種付機)の刷新を行い、平成8年(1996)、VEX方式完全無通風製麴装置、続いて回転式自動洗米浸漬装置を立て続けに開発した。
セールスに関わってきた下林は語る。
「販売している弊社機械装置のほとんどがオーダーメイドであるため、製造からメンテナンスまで、長い年月をかけて顧客の要望や情報を収集することができました。杜氏、蔵人の設備への思いをしっかりとリサーチしてフジワラテクノアートの醸造技術力と融合した機械装置づくりを目指してきた結果、導入機械装置で高い評価と、フジワラテクノアートにして良かったいう言葉を沢山いただいてきました。各顧客からの信頼を、次の仕事に繋げていく、その積み重ねこそが「吟醸蔵商品群」ブランド誕生のストーリーです。」
主力製品の開発を手がけている森は語る。
「平成17年(2005)頃から、今まで培ってきたノウハウをラインナップ化し蔵元とともに本当に美味しい吟醸酒をつくることができないだろうか、と思案しはじめました。まだまだ日本酒の消費には陰りがありましたが、本当に美味しいものは評価されるだろうという想いがあったし、なんといってもフジワラテクノアートの醸造機械を導入した蔵元の日本酒が格段と美味しくなったのを、蔵元も私達も感じていましたから。」
満を持して「吟醸蔵商品群」ブランドとして展開することになったのである。
新たな風を吹き込むチャレンジ
吟醸酒づくりに新たな風を吹き込むチャレンジに、世の動きも同調していた。
平成25年(2013)12月「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録。瞬く間にニュースとなり、日本中を駆け巡った。農林水産省「日本食・食文化の海外普及について」(平成26年9月)によれば、今後の食品輸出の重点品目の中に加工食品(味噌・醤油)やコメ加工品(日本酒)が含まれている。
国内を見てみても、近年消費者の動向は量から質へ推移しており、国内出荷量全体に占める特定名称酒(吟醸酒、純米酒等)の比率は過去10年間で10%以上増加している。
下林は語る。
「日本食ブームに関連して、吟醸・純米酒に人気があつまり、それを主体にしてきている蔵元が出てきています。流れとして中堅どころの蔵元さんも、少し回復しているようです。一方、蔵元の経営としては、少ない雇用でいかに良いものを作れるかが課題となってくるでしょう。また、この流れが加速し吟醸酒の生産量が増えても、機械化により対応できるようにという経営戦略の中で「吟醸蔵商品群」ブランドに注目していただければと思っています。特に夜間作業の軽減化対応で、VEX方式完全無通風自動製麴装置などはおすすめしていきたいですね。」
森は語る。
「大小沢山の蔵元があります。職人が減り、作り手の世代交代もしていく必要があるなかで、市場の需要に答えながら日本酒を造り続けていくためには、数年後どのような蔵にしていきたいか、というビジョン作成が必要になります。その時、弱い部分を補強したり、さらには安定した品質を維持するために計画的な機械化も必要になってくると思うのです。ただ、どこから機械化していけばいいのかわからない、そんな蔵元さんのためにも「吟醸蔵商品群」ブランドが一つの指針になればと思います。」
本当に美味しい吟醸酒をつくるための玉手箱
「吟醸蔵商品群」とは、杜氏や蔵人の最強パートナーであり、本当に美味しい吟醸酒をつくるための玉手箱である。
森は語る。
「吟醸酒は特徴的な処理方法がたくさんあります。フジワラテクノアート製品一つ一つに対して“機械装置のあるべき姿は何か?”を求めたときに“再現性”が一番のポイントであろうと考えました。特に清酒メーカーには要求されることです。「吟醸蔵商品群」はこの“再現性が高い”機械をピックアップしました。」
ラインナップの一部を紹介しよう。
VEX方式完全無通風自動製麴装置
蓋麴法を忠実に再現して高付加価値の麴を再現性良く製造できる。
・2000年12月食品産業新聞社「第30回食品産業技術功労賞」
・2004年2月(財)機械振興協会「第1回新機械振興賞」
・2004年9月日本食糧新聞社「第7回日食優秀機械・資材賞」
森は語る。
「VEXを開発して再認識したことがあります。麴を作る機械が一番難しいということで最初は製麴装置に取り組みましたが、やはりもともとの酒米の水分管理が大切であると。そこで工程を逆にさかのぼって、洗米浸漬装置開発に着手しました。」
回転式自動洗米浸漬装置
バッチ連続で完全な洗米と吸水歩合の調整を行い、後工程の品質を向上させる。
・2006年11月食品産業新聞「第36回食品産業技術功労賞」
開発には相当の苦労があったと森は振り返る。
「僕が開発を担当して、大賀と下林には迷惑をかけました(笑)自動制御機構の確立に苦労しました。」
設計担当の大賀は語る。
「機械には安定して動くことが求められます。そのため可動部が多いこの機械は、試行錯誤が続きました。1回エラーが出てもお客様には怒られますので...。この装置は1台で白米の計量、洗米、リンス、浸漬吸水、表面付着水の強制除去、吸水率自動計測、浸漬米の払出しまでバッチ連続で行い、同時に吸水前後の重量測定に基づき白米の吸水率を把握し、これをフィードバックして吸水時間をコントロールして吸水率を一定にすることができます。当社の中では機構的にも制御的にも比較的複雑です。苦労の末、人手に頼らず目標吸水率の浸漬米が再現性よく提供できる装置になりました。」
下林も言う。
「2~3回マイナーチェンジをしてやっと今の装置になりました。洗米・浸漬作業というのは相当腰に負担がかかります。この機械導入により、かなりの労力軽減に繋がっていますし、異物混入も防げて一石何鳥にもなっています。」
サナ板付浸漬タンク(角型)
短時間で排水可能であり、完全な水切りができることで後工程の品質が向上する。
ブリッジ防止の特殊構造で、給排水及び浸漬米払い出しを自動化することで人手はほとんど不要。
・1996年10月(社)発明協会「発明奨励賞」
今までにサナ板付浸漬タンク、連続式横型蒸米機、連続式冷却機、麴米・掛米混合水輸送装置(水輸送仕込システム)のセールスに関わってきた下林は言う。
「お客さんからの支持が高い製品です。限定吸水ができることが他社との差別化になっています。実機レベルでの開発を重ね、角形の今の形状になりました。処理量の多いとこはひとつの蔵で32機入っているところもあります。この導入をきっかけに弊社のその他機械製品にも注目してくれることが多いです。」
清酒製造設備のプラント設計を担当している大賀は、当時、サナ板の形状の改良に関わった。
「洗浄についてもお客様の要望に応えられるように改良しました。洗浄時にはサナ板が上方に回転するためサナ板の裏側まで完全洗浄ができます。」
吟醸酒の本質を追い続ける
技術部内の連携は、お客様との信頼関係を作りあげている。
「お互いにいいものを作りたい」という共通の思いを、蔵元とも現場の職人とも共有できている。1+1+1=3ではなく、4にも5にもなる仕事への姿勢がいいものづくりに繋がっている。
清酒の原料処理設備は原料の物性等を把握できないと機械装置しての評価が得られない、と下林は言う。
主に設計を担当する大賀は語る。
「技術営業部のメンバーがもちかえってきた要望を図面上で打ち合わせするだけでなく、実際にお客様のところへお伺いすることもあります。直接お客様からの要望を聞くことは大切です。ずっと設計だけしていると現場の状況が見えなくなります。人から聞いたことではなく、お客様の悩みを自分ごととして受け止めることで、何とかしてみようという設計のモチベーションにも繋がります。」
森は最後に「吟醸蔵商品群」ブランドへの想いを語った。
「日本酒ブームといえども、各蔵のブランド商品を軸に清酒の販売が行われています。軸となるブランド酒が高品質を維持するために機械装置を有効に利用する必要があります。杜氏の優れた技術を忠実に反映した機械装置を私たちは開発し、その機械装置を納入することで最終商品である清酒の品質及び再現性が向上して消費者に評価されることを常に思い描いています。」
フジワラテクノアートが貫いてきた再現性の追求が、今、「吟醸蔵商品群」ブランドとして大きく羽ばたく。