粉体殺菌の常識を変えた革新的原理
粉体殺菌の常識を変えた革新的原理
加熱時間わずか0.2esで瞬間殺菌が可能な装置が生まれた。
その名も「ソニックステラ(Sonic Stera)」。
ソニックノズル部を音速で流れ、Sterilization(殺菌)することから、ソニックステラと名付けられた。従来とは全く異なる殺菌原理で、粉体の品質劣化を極小化しながら、確実な殺菌ができるシステムだ。
すでに日本だけでなく、アメリカ、アジア各国、約10カ国の国際特許を取得している。
すでに日本だけでなく、アメリカ、アジア各国、約10カ国の国際特許を取得している。
第3の革新的原理
小麦粉、米粉、香辛料など粉体原料は、一般食品、健康食品、化粧品、医薬品などの幅広い分野で利用されている。しかし、従来の粉体殺菌技術では高い品質を保持した殺菌はできていなかった。
主な各種食品関連粉体殺菌処理は2つ。
「加熱殺菌」と「放射線殺菌」だ。
日本国内では、加熱殺菌で行われるのが通例であるが、加熱殺菌は長い時間熱を与えることで殺菌する。これでは原料が変性してしまう問題があった。成分、香り、色が損なわれる可能性が高い。また、海外では放射線殺菌がいまだ行われているが、食品に対する安全性を確保する風潮が高まる中で今後推奨されなくなると考えられる。
そのような背景の中、ソニックステラの新殺菌システムは“加圧水蒸気”を用いる全く新しい殺菌原理のもとに生まれた。加熱時間は約0.2secと短く、原料の熱変性が低く抑えられる。また通常の蒸気で駆動する為、食品に対する安心、安全が担保できるのだ。『加圧水蒸気を用い原料表面を加熱することにより、原料に付着している一般生菌、耐熱性菌、大腸菌群等の細胞中の水を所定の加圧下で昇温し、ソニックノズルにより瞬時に大気圧中に放出することで、菌の細胞中の水を急激沸騰(気化)させ、組織破壊して死滅させる連続殺菌システム』が確立された。
次世代の高品質粉体殺菌装置の開発へ
開発アイデアは今から10年ほど前、狩山により社内提案された。
狩山は振り返る。
「日本国内では、各種食品関連の殺菌処理を加熱殺菌で行う際の熱による変性の問題が潜在していました。フジワラテクノアートの実績をみていくなかで、蒸気流を利用した短時間熱処理の経験がありました。そこに100℃以上の温度で沸騰する水分の物理的性質を利用し殺菌出来ないだろうか、という案が立案されたのです。原料の変性を最小に抑えて殺菌すること、さらには、様々な食品の粉粒体原料に適応できる加熱処理方法ができないだろうかというテーマを掲げました。」
ポイントとなるソニックノズル部分の技術開発はどのように行われたのだろうか。
平田は語る。
「ソニックノズル部分は加熱管内の蒸気圧力を一定に保つためのものです。圧縮性流体である蒸気等は、臨界圧力比を超えると音速一定となることから、ソニックノズル径を適性な径とすることで、決めた蒸気量を安定的に流すことが出来るようになりました。殺菌対象となる粉体でテストを行い、殺菌条件を決めれば、これを所定のスケール(処理能力)に拡大、縮小出来ようになります。」
ひたすら多種多様な粉体と向き合う日々
開発時、加熱温度や加熱時間、連続性など様々な課題があった。
しかし、最大の困難は意外なところに...。
平田は語る。
「穀物や魚粉等の食品粉体原料を蒸気流中へ投入すること、蒸気の流れる加熱管内を付着することなく送ることに多大な時間と労力がかかっている。蒸気流中に粉体が入る時に圧力損失が起り加熱管圧力が振動を起し、蒸気の逆流が起り安定供給に問題があった。そのため、投入方法、向きを試行錯誤の上改良した。また、蒸気流中に粉体を投入すると粉体表面に蒸気の凝縮が起り管内への付着が起る。この問題については粉体原料を予熱し、過熱水蒸気を使うことにより付着水分を少なくすることと、管内に付着しにくい材料を採用することにより解決した。」
ソニックステラが生み出す食未来
技術部14年、エンジニアリング計画部1年、技術開発部5年、開発商品拡販戦略室1年を経て現在商品戦略室で開発設計を担当している平田に、ソニックステラの販売戦略について聞いてみた。
「粉体殺菌は国内で幅広い分野でニーズがあります。ただ、当面、適用粉体生産量が年間300~1000トン/年位あるものについて取り組みたいと考えています。具体的には、魚粉、穀物粉体などです。」
一方海外では、放射線殺菌の代替技術としての地位を確立し拡販を図りたい、と語るのは海外営業部海外営業グループに所属する姜(かん)だ。
「具体的には、漢方薬があります。弊社は、醸造機器メーカーではありますが、将来の事業展開や方向性を考えた時に、醸造業界のみだけでなく、もっと広く一般食品向け機器販売にも進出する必要があると考えています。今実機としてご検討いただいている企業様もいます。」
フジワラテクノアートが培ってきた醸造機器の知識や技術力が一般食品機器へと応用され、新しい市場へのチャレンジが一つ実を結ぼうとしている。狩山と平田は言う。
「国内外の新分野へ進出するためには新しい機器開発が必須であり、日々、新しい知見を得、技術を磨いていくことが重要です。若い力に期待している。ぜひ、同じような志をもつ人に入社してもらいたい。」